2013年4月27日土曜日

カエルノ話取材こぼれ話:七ヶ浜星のり店編

 
















七ヶ浜に行ってきました。


震災で、壊滅的な被害を受けた宮城の漁港。
七ヶ浜もその一つです。
この七ヶ浜で、震災前から海を思い、
酸処理をしない海苔を作り続けている、星のり店さんに、お話をうかがいました。


1.海苔の酸処理について

海苔を養殖する際、
海苔以外の藻類の繁殖を防ぐため、リンゴ酸やクエン酸といった、
様々な酸処理剤が使われています。
海苔は黒光りしているものが、高値で取引されるため、
アオノリが混じると、商品価値が下がってしまいます。
その海苔業界にとっての厄介もの、アオノリを、
選択的に消滅させるために、 生まれたのが、酸処理剤です。
昭和40年代に始まり、全国的に普及しましたが、
様々な薬品が使われ、海苔の安全性や環境への影響が懸念されるようになったため、
昭和59年に、水産庁から、有機酸に限ることと、
使用の際の注意事項が明記された通達が出されました。

その後、アオノリだけではなく、海苔の成長を阻害する
他のバクテリアにも影響を与えることが分かり、
「海苔活性剤」と呼ばれて、 海苔養殖には、
なくてはならない技術として、普及しています。

しかし、日本の4割の海苔を生産している有明海では、
リンを含む酸処理剤が、毎年3000トン近く使われ(佐賀大学林重徳名誉教授の調査による)
2000年以降、奇形魚が散見されるようになりました。
酸処理剤が大量の植物プランクトンを発生させ、
有明海を酸欠状態にしているためではないか、
という意見が出されています(東北大学江刺洋司名誉教授)

 
2,星のり店の思い
 
ご主人と二人三脚で、酸処理しない海苔と無農薬の米作りに、
26年、奮闘してこられた、星陽子さんにお話をうかがいました。
 
 
 













陽子さんは福島市ご出身。
故郷が放射能に汚染され、
福島の野草や野菜を心から美味しくいただけなくなった悔しさを、
語ってくださいました。


星のり店が、酸処理しない海苔を作り始めたのは、26年前。
陽子さんが3人目のお子さんを出産された頃にさかのぼります。
妊娠中に大量出血し、死ぬ思いでこの世に誕生した息子さんは、
肋骨が一本足りませんでした。
小学校入学前の検診で、初めてそれを知った陽子さんは、
愕然とします。

野菜や米を作る時、特に意識していなかった農薬のことが、頭をよぎりました。
折しも、ご主人の博さんも、締め切ったハウスで、野菜を消毒中に気分が悪くなり、
農薬を使い続けることに、不安を抱きました。

最初は、自家消費の分だけ無農薬で・・・と思いましたが、
子ども達と、彼らがいつか出会う伴侶のこと、
そしてさらにこれから生まれる孫のことにも思いを馳せ、
皆が健やかに生きられる世の中にしなければならないと、
全て無農薬で作ることを決意します。


しかし、無農薬で米を作るよりも大変だったのは、
無酸処理の海苔を作ることでした。

七ヶ浜で、酸処理しない海苔を作っているのは、
50~60ある養殖業者のうち、星さんだけです。
日本全国で見ても、数えるほどしかありません。

スーパーで売っている海苔の成分表示を見てみましょう。
「海苔」とだけ書かれています。
酸処理や、使われている化学肥料には、表示義務はありません。
星さんの海苔が、「無酸処理」「無消毒」と、メディアに取り上げられると、
漁協から様々な圧力がかかりました。

そんな厳しい状況の中で、息子さんも海苔漁にたずさわるようになった矢先に、
震災と原発事故が起こりました。




3.津波と放射能を乗り越えて
















星のり店の下にある、漁港に向かうトンネル。
いくつもの漁船が、このトンネルに吸い込まれるように流されていったそうです。

津波で、収穫間近だった海苔も、
海苔を養殖するためのいかだも、網も、全て流されてしまいました。
米を作っていた田んぼも津波をかぶり、除塩が必要でした。
震災から一週間後、博さんは、竹とロープで、養殖のいかだを作り始めました。
電気が復旧すると、全国の顧客から続々と安否を気遣う電話が入り、
あきらめてはいけない、と懸命に道具作りと、がれき処理に励みました。

しかし、5月頃から、ある不安が頭をもたげてきます。

福島原発から放出された放射能です。
七ヶ浜の海は、空気は、大地は・・・大丈夫なのか?

震災直後、全国からあった注文は、震災前に収穫した海苔が完売した後、
ぱたりと途絶えました。

7月に、熊本の海苔研究の第一人者太田扶桑男氏に、
海苔の細胞を検査してもらい、汚染されていないことを確認しました。
また、海苔養殖は海面で行われ、海底のホットスポットに触れずに成長するので、
原発事故の影響は少ないはずだ、とのアドバイスをもらいました。

こうして、放射能への不安がやわらいだ頃、
下水処理施設から垂れ流される汚染水が、海苔の養殖場を襲いました。
成長した海苔は、ばっさりちぎれ、次々に、海に沈んでいきました。










※撮影:星のり店様2011年12月撮影
  白い泡が塩素


津波で破壊された仙台市と多賀城市の下水処理施設は、
復旧に4年かかると言われていました。
汚水は高濃度の塩素で消毒され、そのまま海に垂れ流されていたのです。
県に何度も陳情に行き、窮状を訴え、2年で何とか復旧し、胸をなでおろしたそうです。

その後、さらに水温が下がると、塩素も海底に沈んでいき、
海苔に被害を及ぼすことはなくなりました。
その年の春に収穫された海苔は、本当に出来が良く、
昔の海苔を思い起こさせるものだったそうです。


4.3.11後に変わったこと

震災後、本当に海がきれいになった、と陽子さんは言います。

震災の2ヶ月前、息子さんがぷんぷん怒りながら、漁から帰ってきたそうです。
海苔の網にペットボトルのフタやビニール袋など、無数のゴミがからまり、
大変な苦労をしたとか。

海には、上流で使われたものが、全て流れ込んできます。
生活排水や農業排水はもちろん、ポイ捨てされたゴミから原発の排水まで。
そうしてたまりにたまったヘドロが、
今回の津波で、一気に陸に打ち上げられたのでした。

博さんは、震災後、お酒を持って、漁に出るようになりました。
海の龍神様へ捧げるために。
海に生かされ、海に助けられていることに、感謝するために。





 星のり店の作業小屋一面に書かれた漢詩。
「俺ガ俺ガノガヲステテオカゲオカゲノゲデ暮ラセ」
とある。
















追記:海藻の放射能汚染について

星のり店の海苔に関しては、HPの「最新情報」で検査結果が公開されています。
http://www.hoshinori.jp/

海の汚染について考えるとき、
参考になりそうな資料を添付しておきますので、
ご覧いただければ、と思います。

①原子力規制委員会による海域モニタリング結果
http://radioactivity.nsr.go.jp/ja/contents/7000/6793/view.html


②放射能情報サイトみやぎ
http://www.r-info-miyagi.jp/r-info/
宮城の農林水産物の測定情報を検索できるようになっています。
海藻は、検出限界10Bq/kg未満で測定され、不検出になっています。

文中でも触れましたが、海藻は海面近くで養殖され、
海底のホットスポットに触れずに成長するため、
また、生物濃縮の恐れもないことから、
今後、また福島原発から大量の放射能が放出されるという惨事がない限り、
もっと低い検出限界で検査しても、不検出ではないか、と考えます。

しかし、どこまで検出限界を下げれば、安心と感じるかは人それぞれ。
少しでも、「安心」の輪が広がるように、
さらに低い検出限界で検査されれば、と思います。


2013年4月12日金曜日

小さな店主が集まるチャリティイベント~元気にいこう!みやぎ~のご案内

仙台もようやく桜が咲き始めました。
しかし、まだ肌寒い日々が続いております。
皆さま、いかがお過ごしでしょうか。


さてさて、今回はチャリティマルシェのご案内です。
この度、6回目を迎えるチャリティマルシェ、
売上の一部と、皆さまからいただいた募金が、被災地へ届けられます。

詳しくは下記のブログをご覧ください。
http://genkiniikoumiyagi.cocolog-nifty.com/blog/

私も、お客として何度か足を運んだのですが、
幼稚園の園庭で開かれることもあり、
子どもものびのび過ごせて、子連れには大変うれしいイベントでした。
他の出展者の皆さんも魅力的!!!

カエルノワでは、Lopehaさんの子ども用絹五本指靴下、
たぴとさんの自然栽培野草茶などをお持ちする予定です。
他にもいくつか、ご紹介できるお品があるかと思います。
わかり次第、こちらでご案内しますね。
そして・・・カエルノ話最新号も、こちらでお配りします!たぶん!
ただいま着々と準備中です・・・。


お越しの際は、ぜひエコバッグをお持ちください。
それから、近隣のコインパーキングをご利用いただきますよう、
お願い申し上げます。

たくさんのお越しをお待ちしております!